1. EQの概念が誕生するまで
EQの前身として、感情と知能の関係を探る研究は長い歴史を持ちます。20世紀初頭、知能(IQ)が人間の能力の主な指標とされ、論理的思考や学問的なスキルが重視されました。しかし、感情が人間の意思決定や行動にどのように影響するかは、あまり注目されていませんでした。
2. 感情知能という概念の提唱(1980年代)
EQという概念が明確に提唱されたのは1980年代後半です。心理学者の**ピーター・サロベイ(Peter Salovey)とジョン・メイヤー(John D. Mayer)**が1987年に初めて「Emotional Intelligence(感情知能)」という用語を使い、感情の認識、理解、制御が知能の一部であるという理論を提唱しました。彼らの研究では、感情が思考や意思決定にどう影響を与えるかが注目され、EQは個人の社会的成功に関わる重要な要素として認識されました。
3. EQが広く知られるようになる(1990年代)
EQの概念が世界的に広がったのは、1995年に心理学者**ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)**が出版した『Emotional Intelligence(邦題: EQ 心の知能指数)』によってです。ゴールマンはこの著書で、EQがリーダーシップや仕事、家庭生活において重要な役割を果たすことを強調し、IQだけでは測れない人間の成功要因についての考え方を広めました。彼の理論は、ビジネスや教育界に大きな影響を与え、EQが重要視されるようになりました。
4. ビジネスとリーダーシップ分野での応用(2000年代以降)
2000年代になると、EQはビジネス分野で注目を浴び、リーダーシップやチームワークにおける重要性が強調されました。ゴールマンの研究を基に、多くの企業がEQをリーダー育成や人材評価の一部として取り入れるようになりました。EQの高いリーダーは、チームをまとめ、ストレスや対立を効果的に管理し、結果として高い業績を上げることが示されました。
5. 現代のEQ研究と教育分野への導入
現代では、EQはビジネスだけでなく、教育分野でも重要な要素とされています。EQを高めるためのプログラムが学校や職場で実施されており、社会的・感情的スキルを育む教育(SEL: Social and Emotional Learning)が推進されています。また、心理学の研究も進み、EQの測定法やその有効性に関する科学的な根拠も増えてきました。
6. EQの未来
今後もEQは、AI(人工知能)やデジタル社会において重要性を増すと考えられています。感情を理解し、適切に対応する能力は、人間同士のコミュニケーションだけでなく、機械とのインタラクションにおいてもますます重要になっていくでしょう。